仙台高等裁判所 昭和36年(ラ)28号 決定
抗告人 笹井康三
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の理由は別紙記載のとおりである。
しかし農地の競売に関する知事の競買適格証明書は競買申出人が農地法に照して該農地の所有権の移転を受け得る資格があることを証明するだけのもので、差押債権者が民事訴訟法第六五六条第二項による買受等の申出をするための必要書類ではないから、知事からまだその下付を受けられないことをもつて同項所定の七日の期間を遵守できなかつたことの事由とすることはできない。論旨は理由がない。
そして記録を調査しても原決定にはこれを取り消すべきかしは見あたらない。
よつて民事訴訟法第四一四条、第三八四条に従い主文のとおり決定する。
(裁判官 村上武 上野正秋 鍬守正一)
抗告の理由
一、右不動産強制競売事件に付最低競売価格では債権者の債権に先立つ不動産の負担及び手続費用を弁済して剰余の見込がない旨の通知を昭和三十六年一月三一日に受領したるにより、債権者は右剰余ある価格を以つて買受けるためその準備として本件農地に付青森県知事に競買適格証明書の下附を申請中でありますが、その手続上昭和三十六年二月末頃でなければその審査の結果が判明しないということであります。
二、然る処此度昭和三十六年二月一六日付を以つて不動産強制競売取消決定が為されましたが、前述の如く抗告人債権者に於て右買受けを為すべく手続中でありますので、該決定を取消し更に相当の御裁判相成りたく抗告の申立に及んだ次第であります。